匿名 asked:
さらにこちらでは
ak0gare answered:
性愛を知らない女子高生が「しにたい」の代わりに「セックスしたい」と呟くこととか、くだものを縦に切ると包丁が濡れることとか、まだ誰にも知られたことのない自分の裸が鏡のなかですごく綺麗に映ることとか、色が夜に移ろいかけた空は携帯だと全然うまく撮れないこととか、切り傷と冬の風は似ていることとか、わたしの暮らしに罫線がなくなって久しいこととか、飛行機雲を見つけても隣の人にわざわざ教えなくなることとか、自分よりも自分の名前を丁寧に書いてくれる人に出会うこととか、合唱することがもう永遠に人生の中でないことに気づくこととか、誰かが落っことしたイヤリングがコンクリートの上で乱反射してることとか、コートのポケットからメモ紙が出てくることとか、今年海に行ってないのにサンダルの底がざらざらすることとか、生きて歳を重ねていることすべてそうです。おとなになるにつれて目につかなくなるのだと思う。自分が切ないと思った瞬間や、誰かの仕草、風景をとこしえに忘れないでください。
親子は選べないけど恋人や夫婦は選べるからといって「どこかに自分のすべてをわかってくれてありのままでいいと言ってくれる人がいる」と思いがちだけど、そんな人はどこにもいないと認めて絶望するところがスタートだよねという話をした。「気が合う」だけで十分で、それでもなかなかいないくらいよ。
「すべてをわかってくれてありのままを受け入れてくれる」のは他者じゃなくて自分自身でやることだと思うよ。自分が自分と気が合ってなければ気が合う人には会えないから、そっちが先だよね。
花火が上がる空の方が町だよ
スパンコールがボロボロに剥がれた鞄、アンパンのヒーロー、階段の途中で羽を開いたまま置物みたいに息絶えていた甲虫。名詞の羅列を切ったり貼ったり動かしたり、観念と実体を行き来する。ベビーカーに乗った子どもが、プラットホームから走り出した電車に向かって手を振っていた、その子の顔が皮膚炎で赤く爛れていた。目元、首筋、皮膚の薄いところ。「君のその肌の中で起こる全ての出来事はなんて美しいんだろう」悲しくないから生きている。想像力は光より速いから、俺はどんなミサイルよりも速くお前の国を爆撃することができるし、いちいち口説かなくても強姦しなくても俺は君の裸を見ることができる。躁鬱病みたいな気候、変質者の吐息みたいな南風、せっかくの12月が、どうしてくれるんだ。
地獄を見捨てて
初めて男の人と寝た次の日の朝、昨日と景色が何ら変わらないことにショックを受けた。
セックスって、もっと特別で楽しい事だと思っていた。もっとこの人を好きになるとか、足取りが軽やかになるとか、処女に対して威張れるとか、なんかそういう事を期待していたのだけれど。全然だ。セックスを経験した事よりも、処女を無くした喪失感の方が大きい。
知らない方が楽しくて幸せな事があるというのは、なんとまあ残酷な事実。
わたしはあと人生で何回、こんなつまらなくて疲れる事をしなきゃならないんだろう、と思うと途方に暮れた。すやすや隣で寝息を立てる男の脛を蹴り飛ばしてやりたくなった。
しばらくすると彼が目を覚ました。おはよう、体辛くない?と聞かれた瞬間、背中の下からゾワゾワしたものが這い上がってきた。わたしを、処女を、食ってやったみたいな得意げな顔が心底憎らしい。初めての朝にこんなことを思うわたしはきっと頭がおかしい。
朝からバイトだという彼を見送った後、すぐさま熱いシャワーを頭から浴びて、いつもの2倍の量のボディーソープで体を洗う。彼はとても丁寧にわたしに触れてくれたと思うのに、自分の体に落ちない汚れを擦り付けられたような感覚が拭えず、何度も唾を吐いた。
ようやくシャワーを止めて、脱衣場で髪を乾かしながら、洗面台の鏡にうつる自分の顔をまじまじと見つめた。つまらない女の顔に見えた。
ファーストキスはレモンの味、みたいなやつだ。そんなわけない。セックスで幸せになれるなんて、漫画の中の話。それでも、周りのわたしより先に経験した友人達は、それなりに初体験を楽しんでいたし、わたしもそうなれるのだと、信じて疑わなかった。バカだ。余程部活で優勝した時の方が価値観変わったわ。
洗いざらしの顔のまま、ノロノロと彼の部屋を後にする。もう2度と来ないかもしれないと思った。少なくとも彼と寝る事はもうないだろう、あってたまるかと毒づく。
突然の訪問なのに、しかも日曜の朝9時という非常識な時間なのにもかかわらず、チャイムを鳴らすと君はいつもと同じように、いらっしゃいと静かにわたしを迎えいれてくれた。君は、年上で、すごく物知りで、どんな時も冷静で穏やかで冷たくて、唯一の男友達だった。
初めてセックスをして、その足で他の男の部屋を訪ねるのも相当非常識だろう。でも、わたしはとにかく解放されたかった。
朝ごはん食べた?パンとコーヒーぐらいなら用意出来るけどと言ってくれた君の話をぶった切って、ねえわたしとセックスできる?と聞いた。必死な顔をしていたと思う。
お願いだから、否定して欲しかった。でも君はやっぱり変わらない穏やかな声で、できるよと躊躇いもなく言い切って、ソファーに座った。向かいのテレビから日曜の朝の、貼り付けたような爽やかなバラエティー番組が流れていた。
なんで、友達じゃん。友達だけど男女だからね。そんなのおかしいよ、セックスしたら健全な友達じゃなくなるよ、それでもいいの?
どんどんヒステリックになるわたしを、ソファーに座ったまま、君は見上げた。何にもセットしていない長めの前髪が、サラリと流れる。
そもそも子孫を残す為に性が分かれてるんだから、セックスする方が自然なんじゃないかな。別に君とセックスがしたいとか、異性の友達全員を性的に見てるとか、そういうわけじゃないよ。ただできるかできないかと言われればできる。それだけの事だよ、そんなに怒らないで。
分かるような分からないような、理解できるようなできないような、とにかくもやもやする回答だった。少なくともわたしが欲しい答えではない。
セックスをしない方が不自然だと言うのなら、わたしそんな友情は欲しくない。セックス有りの友人と恋人の違いは何なのか。全然分からないし、分かりたくもなかった。
今どれだけ涙を流せたら楽なんだろうと、自分を呪った。待てども待てども涙は流れず、瞼の裏でくすぶっていた。
女に生まれたというだけで、こんな思いをするならば、恋人も異性の友人もいらない。わたしをセックスの対象としてではなく、一人間として見てくれる人としか関わりたくない。生娘のような事を思った。
愛がなくてもセックス出来るんだ。思わず口から飛び出したそれに、自分で顔をしかめた。三流ドラマの脇役のセリフみたいで、ひどくチープに響いた。
セックスに1番必要なのは性欲だからね。性欲があるのは仕方ないんじゃない?人間の三大欲求だし。遠慮のない静かな声が、尚わたしの体を重くした。
潔癖な生娘だったわたしは、それ以来君に会っていなかったのだけれど、つい最近ひょんなことで2人でごはんを食べに行った。
あの時の君、びっくりするぐらい可愛かったよねと肩を震わせて笑いをこらえる君に、その話はやめて!と小声で叫びながら、ひたすら口をパクパクさせる。顔から火が出るほど恥ずかしかったし、外じゃなければ確実に頭を叩いていた。
どう?僕とできる?いたずらに君は笑った。いい男になったんだなと感心してしまう程、完璧な笑い方だった。ただのタラシとも言う。
できない。わたしはあなたとは違って男なら見境なく股開くような緩い女じゃないの。言うようになったねえ。君はおかしそうに、ワインを飲んだ。
セックスは相変わらず嫌いだけど、世界は輝いているからそれでいい。セックスをする度男に奪われるような気持ちになるけど、わたしもその分セックス以外で男から奪えばいいから、別にどうってことない。好きな男とのセックスなら作業だと思って我慢出来る。大人になったのだ。
僕、男女の友情って信じてないんだよね。さらりと君は言う。試されると思った。奇遇だね、わたしもだよ。と笑ってミモザを勢いよく飲み干す。
じゃあわたし達は何。友達じゃなきゃ何。セックスをすれば、セフレだの恋人だの無理やり名付けられるであろう。でも、セックスのない異性の付き合いを何と呼べばいいの。考えあぐねているうちに夜が明ける。
でろり、と酔っ払って精神が溶けるのを感じながら、くそくらえと吐き出した。
友情と認めてもらえなくたって、わたしは負けない。爛れない。
シュレーディンガーの猫。君と寝たら最高に楽しいかもしれないけれど、君と寝なければ最高に楽しい夜が約束される。可能性がある。
せっかく処女の時みたいな、わくわくがまだもてる相手がいるのなら、わたしは絶対もう箱を開けてしまいたくないのだ。君と寝て、目が覚めた時景色がいつもと同じだったら、わたしもう一生セックス出来なくなる。例えセックスをしなければ失ってしまう関係だとしても、あの喪失感を味わう事に比べたら何倍もマシ。
お互いに男女の友情は信じていなくとも、わたし達なら例外になれるはずだと、信じている。わたしは不自然で健全な親友にあなたとなりたい。
誰しもが愛を求めている。誰か愛を分かちあう相手を一生を費やして探している。なのに、いざ相手が見つかったとなると、自分をよく見せ続けなければならない心労から、今度は相手から逃げ出したくなるというのは、なんと皮肉なことだろうか(シャーリー・マクレーン)
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